前田紀貞の建築家ブログ

アクセスカウンタ

zoom RSS アルゴリズム建築 第二弾(EAST & WEST)

<<   作成日時 : 2013/06/21 11:13   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

画像




















■アルゴリズム建築設計プロジェクト
名古屋に設計した新しい住宅(家):【EAST & WEST】がもうすぐ竣工します。
http://www.flickr.com/photos/nmaedaatelier/sets/72157632634091359/detail/
これは、私たち前田紀貞アトリエ一級建築士事務所が、この5年ほど設計に関わっている「アルゴリズム建築プロジェクト 三部作」の第二弾となるものです。
【EAST & WEST】の前に少しだけ、「アルゴリズム建築プロジェクト 三部作」についての概要を紹介します。


01:【I REMEMBER YOU】:2009年竣工
2009年に竣工したもので、「最も明るい住宅(家)の為のアルゴリズム」という設計手法によって生成してきた住宅(家)の空間・形態です。クライアントからの要望である「明るい家」というものを、単に雰囲気や勘で実現するのでなく、精密に「光量を測定するアルゴリズム」によって空間と形が導き出されました。
画像
















-画像   :http://bit.ly/11bGuyb
-設計   :前田紀貞アトリエ一級建築士事務所(担当:白石隆治)+Proxy NY(コロンビア大学)
-構造設計 :梅沢建築構造研究所
-詳細説明1 :アルゴリズム建築と作家性 http://bit.ly/hcOsD
-詳細説明2 :記憶を光に変えたアルゴリズム http://bit.ly/5koRDB


02:【ENISHI Resort Villa】:2014年竣工予定(施工中)
「建築家と施主の脳波」を測定することで、理性や言葉によらぬ 潜在的無意識の領域を建築の空間・形態として実現させてしまおう、という試みです。現在、設計は終了し、台湾島の西方約50kmに位置する「澎湖島」にて施工中。これについては、近々にこのブログにて紹介する予定です。
画像

































-画像  :http://bit.ly/16axayF
-設計  :【前田紀貞アトリエ一級建築士事務所】&【CHIASMA Factory(辻真悟)】&【Proxy NY】&【台湾 謝宗哲チーム】(謝宗哲+翁廷楷)
-構造設計:陳冠帆


03:【EAST & WEST】
これが、今回、名古屋に竣工間近のアルゴリズム建築(住宅の設計)です。
画像


























-設計   :前田紀貞アトリエ一級建築士事務所(担当:黒瀬直也)+村山理
-構造設計 :梅沢建築構造研究所

このプロジェクトの一番大きな特徴は、「(住宅の)部屋配置をコンピューターに決めさせた」という点です。
詳細には、Processingによる「C言語」として記述されたアルゴリズムに従って「(住宅の)部屋配置」が決定される、というものです。以下 説明します。

通常、建築計画での(住宅の)「部屋配置」は「手」が決めてゆきます。最初に大枠の機能分け、次にそれらの関係を検証し、最終的に「部屋割り」ができあがります。しかしながら、これらはいつも経験と勘に頼る部分でしかありません。そこで【EAST & WEST】では、それをコンピューターによって決定させてみました。
※Processing:Casey Reas と Benjamin Fry によるオープンソースプロジェクトであり、かつてはMITメディアラボで開発されていた。電子アートとビジュアルデザインのためのプログラミング言語であり、統合開発環境 (IDE) である。


■具体的な決定方法
具体的プロセスについて。
まず、クライアントより要望された住宅(家)の諸室をリストアップしてみます。
【1階】:玄関・リビング・ダイニングキッチン・祖母室・水周り
【2階】:主寝室・子供室・吹抜
と、合計8種類の住宅の部屋が想定されました。
ここまでは、どこにでもある計画法です。ポイントはこの次です。
画像

















上の絵の様な具合に、
「住宅の各部屋は小さなパーティクル(玉)によって構成されている」とモデル化します。【原子】が集まって【分子】を作るように、【パーティクル】が集まって【部屋】を作ると仮定する、ということです。上の「8色」は「8種類の部屋」ということ、また「パーティクルの数」は「部屋の大きさ」を示します。

- 【1階】は、銀色(玄関)・赤色(祖母室)・青色(水周り)・紫(リビング)・黄色(DK)
- 【2階】は、水色(子供室)・薄紫(主寝室)・白色(吹抜)

まずは、こうした「プログラムを書く上でのモデル」を設定すること、これが「アルゴリズムによる住宅の部屋配置決定」のスタート地点となります。

初期設定の段階では、8色のパーティクル(部屋)はどこに位置していても構いません。この後、アルゴリズムが決めたルールによってパーティクルは移動しまくりますから、最初はあくまで任意でいいのです。それらを、予算と法規から導かれる最大限ボリューム(ニュートラルなボックス)の中に封じ込めます。
ここで建築家が任意に設定する設計与件としては、

@:南面・西面に「既成品サッシュ」で許される最大開口を中心位置に配置する(採光)
A:1階と2階の間は、各階のパーティクルは行き来することはできない
(1階と2階の部屋割りはクライアントの要望で動かせない)
B:2階南側にバルコニー設置
くらいのものです。



さて、今回の目玉について。
まずは初期設定として整然として整列させられたこれらパーティクルを、「施主の要望」に合うように配列し直す作業が行われます。いわば、整列させられたパーティクルが席替えをして、最終的に一番クライアントの要望に近い席に収まるように、つまり要望に合う家へ仕向けてゆくのです。 
無論、パーティクルの席替えは、好き勝手に行われてよいものではありません。そこには、アルゴリズムが規定する「席替えルール」があります。

例えば、住宅(家)の部屋配置を決定する為の「クライアントの要望」といえば、

1. ダイニングは明るい方がよい
2. おばあちゃんはトイレに近い方がいい
3. 水周りは鬼門を外したい
4. リビングの上部は吹き抜けであってほしい
5. 祖母室からは過度に子供室の喧噪が聞こえない方がいい

等々です。

通常ですと、この「要望」を建築家が経験と勘によって組み立てますが、【EAST & WEST】ではそれが「(諸室を構成する)パーティクルの仲良しの程度」という力学に置き換えられます。「パーティクルの仲良しの程度」、つまりこれが「クライアントの希望する部屋どうしの関係」を実現へ導く手法となります。パーティクルたちが席替えする際も、彼等はしっかりとクライアントの要望に従って、新しい席の位置を決定しているのです。つまり、クライアントが望む家の設計へ着実と向かっているのです。

「パーティクルの仲良しの程度」という視点からすれば、上の「クライアントの要望」(青字)は、下のようなパーティクルの「吸着&反発の力学」(青字)として言い換えられることになります。

1. 「ダイニングのパーティクル」は「南側開口部」と粘着しやすい
2. 「おばあちゃんのパーティクル」と「トイレのパーティクル」は粘着しやすい
3. 「水周りのパーティクル」が「鬼門」に入ると反発される
4. 「リビングのパーティクル」と「吹き抜けのパーティクル」は粘着しやすい
5. 「祖母室のパーティクル」は「子供室のパーティクル」と反発する


簡単にいえば、「好きな人(部屋)どうしは粘着する、嫌いな人(部屋)どうしは反発する」という好き嫌い関係を、その好きの度合いとして数値化した、ということになります。ちなみに、その「好きの度合い」の評価は、「パーティクルの“仲の良さ/悪さ”の通知表5段階評価で決定する」モデル化を使います。

通知表5:とても粘着(仲良し)
通知表4:どちらかといえば粘着(仲良し)
通知表3:どちらでもよい
通知表2:どちらかといえば反発(仲が悪い)
通知表1:とても反発(仲が悪い)
というふうに。

「パーティクルどうしの仲良し度合い」のイメージとしては、ネバネバのガムのようにくっつきやすいパーティクルもあれば、ビリヤードの硬質な玉のようにはじき合うものもあるという「粘着 or 反発の力学」といえます。この「仲良し度合い」を、各々の部屋のパーティクル(部屋)が席替えをする“動機”として設定し、「好きな玉どうしは近づき、嫌いな玉どうしは離れられるような席替えを行うようプログラムする」、これが今回のアルゴリズム操作の基本です。
実際のC言語によるアルゴリズムの記述では、「パーティクルの関係度合い」(粘着度合い)はProcessingによって規定されます。初期設定としてそれだけ決定しておけば、あとは リターンキーを押して、勝手にパーティクルどうしに席替えをやらせておけばよいという訳です。そこで僕達は何も手を貸すことはありません。そのうち、リターンキーによってドライブされたパーティクルたちは、小学校の席替えよろしく、クライアントの要望を上手に咀嚼しながら座席位置を交換し合い、その交換が最高に満足した収束に至る(部屋割決定)まで席替えは行われ続けます。



例えば、先の絵の状態では、リビング(紫玉)の上に吹抜(白玉)はきていません。これはあくまで初期設定ですから当然ですが、このままではクライアントの要望に違反しています。
であれば例えば、リビングの「紫玉」の一個が祖母室の「赤玉」の一個と席を交換すれば、少なくともその玉の部分に関しては、クライアントから望まれた結果が導かれます。この席替えが一個一個のパーティクルに関して辛抱強く行われれば、いつか
=「リビングの上に吹き抜けがくる」
=「祖母室の上には吹き抜けが位置しない」
という状態へ近づいてくるようになります。無論、この際、8個のパーティクルどうしの複雑な力学が働きますが、この交通整理をするのがアルゴリズムとなります。アルゴリズムでは、すべてのパーティクルに関して、「ウインウインの席替え」が可能になる席替えを瞬時に指示してゆきます。

下図一番左の絵のなかで、「左側ブロック」は「1階」、「右側ブロック」は「2階」の諸室配置を示します。最初は任意の位置設定から席替えをスタートしたパーティクル(一番左の絵)たちが、時間経過と共に、中央、そして右の絵のように変化してゆきます。徐々に「座りのいい場所」を発見し収束してゆきます。
画像









この住宅(家)の部屋どうしの「席交換」の様子を動画にしたものが、以下の動画(You Tube)です。まずは、パーティクルの席替えの様子を動画にて御覧ください。
http://bit.ly/XIWepL
どうです?
パーティクルたちには、まるで自分たちに意志があるかのように、「皆が一番納得する席替え」を一所懸命に行っているではないですか。


■建築化
画像









さて、上が最終的に席替えが終了し停止状態に至った諸室の様です。
荒削りの原石のような顔付きですが、これが、パーティクルどうしが皆で一番納得し合った席替えの結果といえます。これこそが、「コンピューターが計算してくれた家の部屋割」なのです。

次は、この原石を建築に持って行く為の方法が模索されます。その為の「建築化」の手法が幾つも考案されました。このゴツゴツの塊を、何かしらの手法にて、「部屋の形」にしてゆく方法の模索です。
それには、ボリュームで象る方法、帯で象る方法など、幾つもの手法がありましたが、実際に採用されたのは、「H=800(天井高×1/3)の帯で象る」というサブルールでした。(中段・左から2番目)
画像












これは、各階ごとに「下・中・上」の三層の帯、すなわち
下層: 床±0  〜 800
中層: 床+800 〜 1600
上層: 床+1600 〜 2400
によって、最初の原石の領域を象ってゆく方法です。結果、「うねるように交錯した壁構成」が生成してきます。
ひとつ明記しておかれなければならないことは、これらの空間は建築家によって「制作」(設計)されたのではなく、自然が産まれ出てくるようにして「生成」してきた家なのだ、という経緯です。この「生成してきた部屋」の交錯した帯の隙間からは、光や風、視線が通り抜け住空間に綾を産み出し始めます。
画像


















模型は、左が1階、右が2階となります。
画像









最後にこれらを平面図に写し取ります。ダブルになったラインが多数ありますが、これが「3層の帯」の重なりを示しています。
画像





















画像




































■トップダウン vs ボトムアップ
ところで、今回 説明したプロセスは「蟻塚」(蟻の家づくり)が作られる「自然の摂理」、すなわち「ボトムアップ」の創作プロセスにとてもよく似ています。画像


















そう、上の様な蟻塚が作られる際、蟻たちは最初からこのような最終的な見事な「(家の)全体像」を予測しながら「制作」しているでしょうか?無論、答はNOです。
そうではなくて、隣の蟻どうしが出すホルモン量や移動の方向、速度、そんな要因による「近隣どうしの事情」(部分どうしの都合)によって、随時 口にくわえた土の塊をどこに落とすか、を決めているに過ぎません。
画像


















これは、明快な「全体像としての青図」(トップ)がまずあって、その後それを実現すべく「部分」が計画趣旨に見合うように施工されてゆくというプロセスではなく、「部分」の関係性・都合がまず先にあり、次に部分どうしが互いの都合で事を運んでいくうちに、結果、ある瞬間突然、見事な「全体像」が立ち上がってくる、という、いわば「生成」とも言えるべきプロセスといえます。
各々の小さな小さな蟻(部分)どうしの事情(関係性)を丹念に積み上げてゆくことで、いつかとてつもない「全体像」を結果としてもたらしてくれる、そんな「生成の流儀」といえます。

或いはそれは、「人工の計画」でなく「自然の摂理」(メタ計画)と呼ばれてもいいものです。この後者のプロセスを、「部分→全体」なる順番に従うということで、「ボトムアップ」と言うことがあります。
一方、その反対の「トップダウン」とは、先の「まずは全体像(青図)ありき」のプロセスです。これこそ、近代までの「制作」の手法、すなわち「全体→部分」という順番に従った方法をいいます。僕達が慣れ親しんでしまった「制作」というもののプロセスはこちらに属します。それはあくまで、「摂理(メタ計画)」でなく「人工(計画)」ということになります。

【EAST & WEST】という住宅(家)の部屋配置は、近代建築の建築家が作家性をモリモリ出しながら「トップダウン」で設計・決定したようなものではありません。そうではなくて、諸室のパーティクル(部分)どうしが(蟻がそうするように)互いに相談しながらクライアントの要望を聞きながら席替えをする中、「結果出てきてしまった(家としての)全体像」といえます。これこそがこのプロジェクトの、建築創造という視点での独自性といえます。


■近代建築 → 現代建築
今迄僕たちが習ってきた古典〜近代の建築というものは、ヴァナキュラーなもの以外は、その殆どが「トップダウン」(制作)の手法でやり繰りされてきました。そこにはいつも最初に、「まずはこんな感じで……」という「全体像」(青図)があったのです。
であるからこそ これまでは、建築家が設計する際の個性や作為や手癖や計画性が珍重されてきたという訳です。そこではいつも作家性という「トップダウン」が主人として君臨してきました。「住宅が機械のメタファー」であり続けていることの所以でもあります。
しかしこれから「現代建築」という領域へ足を踏み入れなければならない僕達にとって、もはや、この「計画性」だけでは充分でなくなってきていることは明白な事実です。恐らく、建築の次のステージで待ち構えている概念とは、
「自然」、「摂理」、「生成」、「ボトムアップ」、「非線形」、「相」、「関係性」、「有機生命体」、「無意識」、「非論理」といった言葉で捉えられる何かであります。

かつてのメタボリズムが有機的に成長する生命体の新陳代謝をメタファーにしたこともありましたが、今回の「トップダウン vs ボトムアップ」という視点からすれば、依然としてそれは「トップダウン」の「制作」方法の域を出ることはありませんでした。これは「非計画的方法を示唆する計画」でしかなかったという訳です。
しかし今、「近代建築」の次に到来するであろう「現代建築」に僕たちが挑戦するとき、いまひとつの「ボトムアップ」の手法が決して忘れられるべきではありません。
繰り返しになりますがそれは、(自律による)「制作」から、(自然発生的な)「生成」、という言葉によって言い当てられる何かです。同時にそれは、常 申し上げている「無我」や「無私」とも繋がる話でもあります。



念のため最後に申し上げておきますが、
今回のブログでは、「建築の創作では“ボトムアップだけが重要である」と宣言しているのではありません。そうではなくて、これまでの建築が「トップダウン」だけの方手落ちで来てしまったため、「“トップダウン”と“ボトムアップ”の視点両方を見切る目が必要である」ということを声高らかに申し上げたいのです。
あくまで、白と黒、清濁、明暗、両方無いといけません。

建築家 前田紀貞

【前田紀貞アトリエ一級建築士事務所 HP】




・設計      :前田紀貞アトリエ一級建築士事務所+村山理(前田紀貞建築塾 第一期生)
・担当      :黒瀬直也+石橋正記(旧スタッフ)
・構造設計    :梅沢建築構造研究所
・施工      :丸山建設
・Processing 指導 :Proxy NY


【EAST & WEST】 http://bit.ly/XUlr1e


■付録
2009年に竣工した「アルゴリズム建築プロジェクト #1」の詳細:担当/白石隆治

・アルゴリズム建築と作家性
http://bit.ly/hcOsD
・記憶を光に変えたアルゴリズム建築
http://bit.ly/5koRDB

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
アルゴリズム建築 第二弾(EAST & WEST) 前田紀貞の建築家ブログ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる