前田紀貞の建築家ブログ

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zoom RSS 部屋配置をアルゴリズムで決めてみた

<<   作成日時 : 2013/01/31 11:45   >>

驚いた ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

大変に申し訳ありません。当記事は以下へ引っ越し致しました。

http://norisada.at.webry.info/201306/article_2.html

どうか宜しくお願いいたします。


























































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■コンピューターによる「部屋配置」決定

「アルゴリズム建築プロジェクト #2」:【EAST & WEST】(設計:前田紀貞アトリエ+村山理)が上棟しました。
2009年竣工の「アルゴリズム建築プロジェクト #1」:【I REMEMBER YOU】
(コロンビア大学 Proxyとの共同設計)
http://bit.ly/11bGuyb
に続く2作目です。

今回は、Processing※によるアルゴリズムに従って「部屋配置」が決定されました。
通常、建築計画での「部屋配置」は「手」が決めてゆきます。
最初に大枠の機能群分けをし、次にそれらの関係の詳細を詰め、最終的に部屋の割り付けができあがります。いつも、経験と勘に頼る部分です。
しかし【EAST & WEST】では、それをコンピューターに決定させてみたのです。
※Processing:Casey Reas と Benjamin Fry によるオープンソースプロジェクトであり、かつてはMITメディアラボで開発されていた。電子アートとビジュアルデザインのためのプログラミング言語であり、統合開発環境 (IDE) である。

■具体的な決定方法
具体的な手法を説明しましょう。

まず、必要諸室をリストアップします。
【1階】:「エントランス」「リビング」「ダイニングキッチン」「祖母室」「水周り」
【2階】:「主寝室」「子供室」「吹抜」

という8種類があります。
次に、「面積配分」の要望が決定されていますから、それに「天井高」を乗じればそのまま「体積配分」になります。

ポイントはこの次です。
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上の絵の様な具合に、
体積配分された諸室は、「小さな玉(パーティクル)で構成されている」と想定するのです。
「色別」が「部屋別」です。
※【1階】:銀色(エントランス)・赤色(祖母室)・青色(水周り)・紫(リビング)・黄色(ダイニングキッチン)
 【2階】・水色(子供室)・薄紫(主寝室)・白色(吹抜)

※実際は「玉」でなく(600×600×600の)「サイコロ」と言った方が正確です。


初期設定の段階では、8色のパーティクル集団(部屋)はどこに位置していても構いません。任意でいいのです。
それらを、敷地が許容する最大限ボリュームの最もシンプルな「ボックス」の中に封じ込めます。
ちなみにこの「ボックス」に付加される初期設定として、
=採光が確保される南面・西面に、既成品サッシュが許す最大寸法の開口部を立面中心位置に配置する
=1階と2階の間をパーティクルが行き来することはできない(階ごとに決定された部屋は他の階に移動できない)
という拘束だけが与えられます。


ここからが今回の目玉です。

通常、部屋の配置を決定するには「住まい手の要望」が必要です。
例えば、
1. おばあちゃんはトイレに近い方がいい
2. 水周りは鬼門を外したい
3. リビングの上部には吹き抜けが欲しい
4. 祖母室からは過度に子供室の喧噪が聞こえない方がいい
5. ダイニングは明るい方がよい

等々。

通常ですと、この「要望」を建築家が経験と勘によって組み立てます。
しかし今回はこれを
「(諸室を構成する)パーティクルの仲良しの程度」
に置き換えました。

そうすると、上の「要望」は下のように言い換えられることになります。
1. 「おばあちゃんのパーティクル」と「トイレのパーティクル」は仲良し
2. 「水周りのパーティクル」は「鬼門」に入ってはいけない
3. 「リビングのパーティクル」と「吹き抜けのパーティクル」は仲良し
4. 「祖母室のパーティクル」は「子供室のパーティクル」と仲が良くない
5. 「ダイニングのパーティクル」は「南側開口部」へ寄っていく



つまり、諸室を作るパーティクルどうしの「仲の良さ/悪さ」を通知表1~5のランクで決定してみる、という作業を行います。
とても仲良し(5)>どちらかといえば仲良し(4)>どちらでもよい(3)>どちらかといえば仲が悪い(2)>とても仲が悪い(1)
というふうに。
イメージとしては、ネバネバのガムのようにくっつきやすいパーティクルもあれば、ビリヤードの硬質な玉のようにはじき合うパーティクルもあるという、そんなものです。

この「仲良し度合い」を、8個のパーティクル(部屋)ついて施主から聴取した要望を基に決定し、パーティクルどうしが好きな人と近づけるようにプログラムするのです。
それは、「関係性の度合い」をProcessingによってアルゴリズムとして記述する、ということになります。
あとは、リターンキーを押して勝手にドライブさせておき、パーティクルどうしの好き嫌いで、座る位置を交換し合う運動状態が収束に至る(部屋割決定)まで待つだけです。


例えば、ここで行われていることは、
最初の任意配置では、
・リビングの上に吹抜がこない
すなわち
・「紫のパーティクル」(リビング)の上に「白のパーティクル」(吹抜)がきていない
なのですが、

「紫」(リビング)が「赤」(祖母室)と席を交換すれば、
・「リビングの上に吹き抜けが位置する」+「祖母室の上には吹き抜けが位置しない」
という、ウインウインの席替えが可能になります。



こうして、パーティクルはまるで自分の意志があるかのように、一所懸命に席替えをしようと働き続けるという訳です。

この席交換の様子を動画にしたものが、以下の動画(You Tube)です。
http://bit.ly/XIWepL
左ブロックは1階の諸室配置、右ブロックは2階の諸室配置を示します。
最初は任意の位置設定からスタートしたパーティクルが、時間経過と共に、徐々に「最終的に座りのいい自分の場所」を発見し収束してゆくことがわかります。

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■建築化
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さて、上が最終的に席替えが停止状態に至った諸室の様です。
これが、計算機がやってくれた部屋割の結果です。

これを平面図に写し取ります。
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今回は、先のボリュームをH=800ごとに帯で輪郭をなぞる、という建築化の為のサブルールを設定しました。結果、各々の階ごとに、
・FL±0〜800
・FL+800〜1600
・FL+1600〜2400
という3つの帯(1階+2階:6つの帯)による交錯した壁構成の空間になります。
交錯した帯の隙間からは、光や風、視線が通り抜け空間に綾を産み出します。
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左が1階、右が2階の模型です。
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■トップダウン vs ボトムアップ
ところで、
今、御説明したプロセスは「蟻塚」が作られる「自然の摂理」、すなわち「ボトムアップ」の創作プロセスにとてもよく似ています。
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そう、上の様な蟻塚が作られる際、蟻たちは最初からこのような最終的な見事な「全体」像を予測しながら作ることはありません。
そうではなくて、蟻どうしが出すホルモンの量や歩く速度・方向、そんな要因の
「お隣さん(部分)どうしの都合」
によって、随時 口にくわえた土の塊をどこに落とそうか、と決めているに過ぎません。
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明快な「全体」がまずあって、それに従うように「部分」の配列が合目的的に計画されてゆくのではなく、「部分」の関係性・都合があって、結果、ある瞬間突然、見事な「全体」が立ち上がってくる、という創作の方法です。各々の小さな小さな蟻(部分)どうしの関係性を丹念に積み上げてゆくことが、いつかとても大きな全体を結果としてもたらしてくれる
そんな創作の流儀といえます。
人工の「計画」でなく「非計画」(メタ計画)と呼ばれるものでもあります。
これを「部分 → 全体」という順番に従う創作方法として「ボトムアップ」という言葉で言うことがあります。対して、「全体 → 部分」という「全体像が先にあるようなプロセス」、無論 人間の創作プロセスも基本的にはこちらに寄っていますが、それを「トップダウン」と呼ぶことがあります。

【EAST & WEST】の諸室配置は、建築家が作家性をモリモリ出しながら「トップダウン」で決定したのではありません。反対に、諸室のパーティクル(部分)どうしが(蟻がそうするように)相談しながら席替えをする中で、結果出てきた「全体」ということで、そこに大きく「ボトムアップ」の手法が入ってきていることになります。
ここがこのプロジェクトの独自性なのです。

■近代建築 → 現代建築
僕たちが習ってきた近代建築というものは、その多くが「トップダウン」の手法でやり繰りしてきました。
だから建築家の自我や作為が問われてきたという訳です。そこではいつも作家性という「トップダウン」が主人として君臨してきた、ということになります。

例えば、かつてのメタボリズムが有機的に成長する生命体の新陳代謝をメタファーにしたこともありましたが、この「トップダウン/ボトムアップ」という視点から見れば、依然として「トップダウン」の創作方法の域を出ることはありませんでした。
しかし今、「近代建築」の次となるであろう「現代建築」を僕たちが鑑みるとき、いまひとつの「ボトムアップ」の手法を忘れることは決してできません。
それは、(自律による)「創作」から(自然発生的な)「生成」、という言葉でも言えることです。同時に、いつも申し上げている「無我」や「無私」にも繋がる話です。

最後に申し上げておきますが、今回、建築の創作では「ボトムアップ」だけが重要である、と言っているのではありません。そうではなくて、「トップダウン」と「ボトムアップ」の視点両方を見切る目が必要、という意味なのです。あくまで、白と黒、両方無いといけません。




【EAST & WEST】が数ヶ月後に立ち上がったとき、そこに現われる空間の質を、今、とても楽しみにしています。
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※ちなみに、当プロジェクトの部屋配置の決定方法(パーティクルの引力斥力を使っての秩序生成)を考案し、且つ、そのプログラムをProcessingによって記述してくれたのは、第一期建築塾生である村山理氏です。仕事の合間を縫って必至にプロジェクトに加わってくれました。
感謝。

・担当      :黒瀬直也+石橋正記(旧スタッフ)
・構造設計    :梅沢建築構造研究所
・施工      :丸山建設
・Processing 指導 :Proxy NY


【EAST & WEST】 http://bit.ly/XUlr1e


■付録
2009年に竣工した「アルゴリズム建築プロジェクト #1」の詳細:担当/白石隆治

・アルゴリズム建築と作家性
http://bit.ly/hcOsD
・記憶を光に変えたアルゴリズム建築
http://bit.ly/5koRDB







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